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§4 シベリアトラ・ツア−(5月1日)
さて、この日は山田さんが提案してきたシベリアンタイガ−・リハビリテ−ション・センタ−の現地調査の日である。といっても、正式な通達を出しているのではなく観光客として入り、まずは状況を見るという仕事である。もちろん私にとってはオリに入ったトラとは言え最大の楽しみを抱いてワンボックスカ−に朝9時ちょうど乗り込んだ。和田さん一家6人も一緒で運転手さん通訳の女子学生含め全部で9人だ。
市街地をひとたび出ると信号のない白樺林の見える平坦な平原を南東へ時速80キロ(途中からのジャリ道は50キロだったろう)で2時間半ただひたすら走って小川のある山麓地帯に入った。遠くに700メ−トルほどの平坦な山稜地帯が望まれた。ポツンと見えるダ−チャの風情はこの何もない平原地帯によくなじんでほこりをかぶっていた。
昼近くに着くと一本丸太の渡り橋を歩いて小川を渡った。300×400mくらいの斜面の一角がそれらしく、左手半分はまだ整備中であった。入口周辺はかの「デルス・ウザ−ラ」の映画の冒頭に出てくる伐採作業現場の入口のように、伐採木がうち捨てられそれなりに興味深い(つまり殺伐として何もない)。映画の世界に私はタイムスリップしたように思った。ここに来る人たちはみんな「デルス・ウザ−ラ」を見て来た方が良いだろう。こう言うのは半分本気のつもりだ。
つまり、ほどよく整備されていればそれなりに「立派」と思うかもしれないが、私には整備されていない方が風情があり、動物たちとの身近な接触を結果として楽しめたのである。
このことは来訪者に「見せもの」を目的としていないという今の状況を事前にインフォ−ムすることによってプラスの対応を引き出すことが重要となる。「クマやトラの爪に気を付けて下さい。タヌキもかじることがあるかもしれません。あまり近寄らないように。でも、ケ−ジの網目が荒い分、動物たちを身近に感じられます。」しかし、このことは来訪者が今回の10人単位に限ってのことで、これが30人、40人、50人ともなると当然トラブルを出す人間も出てくるだろうし、リハビリ中の動物たちにとっても大変なストレスになる。そもそも正直なところ、ここの動物たちの状況はどのようなものか、当然プラスに評価するとしてもよく知っておく必要がある。
森の中の動物園として地元の野生動物たちを本来の生息状況に近い状況で飼われ展示することは大変意義があり優れた活動であると私は思う。さらに飼育法、繁殖法が実績として重ねられれば将来的には野生の遺伝子保存の重要な動物園になっていくのではないか。しかし、動物たちの展示方法はこれは明らかにリハビリ施設のみの役割ではなく、集客を考えた動物園的なものに変化しているのではないか、とも私には思われた。でなければ観光ツア−もまたありえないないのである。今後、学術的情報も含めた展示の方法を考えなくてはならないだろう。しかし、このセンタ−で重要な他の3頭のトラは公開していない。2年程前にシベリアトラの保護施設を日本のテレビで見たことがあるが、きちんと愛情を持って管理しているおじさんが主人公だったように思う。ともあれ、こうした活動も良い人材に加えて予算の保証がなければきちんとした活動を続けることは不可能だ。
つまり私の見方としては、極東の辺境でこのような施設を立ち上げてくれたのは、世界の自然を知ろうとする来訪者にとってはこの上ない幸せである。なぜならばこれがなければシベリアトラの生息地の風を感じることはまずないからで、町中の動物園とははっきり位置付けが異なる。来訪者に的確なイメ−ジを与えてくれるのである。私は本当にいこの忙しい中、来て良かったと思った。ここはバスに2時間半乗ってしか味わえない野生地への入口だろう。
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