高校野球、三沢高校3年のジャン・ハスネン選手。アジアから8つの国と地域が参加するU18アジア選手権で母国のパキスタン代表に選ばれました。しかし、初めての国際大会で待っていたのは、高校生にとってはあまりに残酷な現実でした。ジャン選手を取材しました。
自慢の長打力を武器に鋭いスイングを見せる三沢高校3年のジャン・ハスネン選手。パキスタン出身です。夏の青森大会では2年生から4番を務め、チームに貢献。最後の夏となった2024年は不動のエースとしても活躍。2種類のスライダーを武器に緩急自在の投球を見せました。
ジャン選手は9月2日~8日に台湾で行われたU18アジア選手権で、パキスタン代表に選出。野球が盛んではないパキスタンからは金銭的援助がなく、渡航費は自己負担。両親のサポートを受け、全て自費で参加しました。
参加にあたり楽しみにしていたことがあります。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
「何よりも日本代表と試合をするかもしれないという予定もあったので、だとしたらぜひ間近で高いレベルの選手とやりたいと思って招待を受けました」
しかし、待っていたのは残酷な現実でした。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
「まさか大会に出られないなんて想像になかったです」
「パキスタンからの選手が来ない」。国内の選手は「外交関係のない台湾に渡航できない」という理由から出国できなかったのです。
結局、ジャン選手を始め、海外組6人しか集まらず、全ての試合を棄権。国際大会を1試合も経験できず、大会は幕を閉じました。
しかし、夢を失ったジャン選手に日本代表チームから声がかかります。日本高野連は急きょ、9月5日の公式練習に招待しました。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
「もう夢見てるんじゃないかと思って、『あれ本当?本当?』となっていて」
「もう聞いた瞬間既に緊張してて、どうしようみたいな感じでしたね」
「JAPAN」の選手にまじり、ひときわ目立つ緑の「MISAWA」の文字。夢の一日が始まりました。バッティング練習では日本代表を率いる小倉全由監督からマンツーマンで指導を受ける場面もありました。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
「体の前で打つイメージもそうですし、あまり突っ込まないということもですし、バットの出し方も丁寧に教えてもらって、小倉監督からは詰まってもいいから思い切り振ってみなさいって言われて」
その後のフリーバッティングでは、レフトスタンドにホームランも!日本代表の選手たちからそのパワーを絶賛されました。
温かい歓迎を受けたジャン選手ですが、特に親交を深めたのは夏の甲子園の優勝投手でした。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
「(映っているのは)京都国際の中崎君ですね」
「チームメイトで一番コミュニケーションを取ったし、中崎君からキャッチボールをしようって誘いもあったので、すごくうれしかったです」
最後は日本代表のキャプテンを務める報徳学園の間木歩選手と記念品を交換。侍ジャパンの帽子とパキスタンのチームTシャツを交換しました。
【三沢高校 ジャン・ハスネン選手】
(Q.どんな経験だった?)「僕の野球人生の中でものすごい良い経験・財産になるような経験でした」
(Q.今後の進路について)「自分はもともと大学で野球をやる予定で、今回日本代表と練習してみて僕も刺激もらいましたし、自分の力も試せて、これなら絶対追いつけると自信を持ったので、本当にあすにでも大学行って野球をやりたいという気持ちですね」