5月に開催された青森県高校総体陸上競技のやり投げ女子で4位に入賞した、青森聾学校高等部3年の古川瑛梨奈選手です。特別支援学校の生徒がこの種目で東北大会出場を決めたのはなんと32年ぶり。服部アナウンサーが取材しました。
【服部アナ】
「こんにちは。古川さんですね。きょうはよろしくお願いします」
【青森聾学校高等部3年 古川瑛梨奈選手】
「よろしくお願いします」
古川瑛梨奈選手、青森聾学校高等部3年生。生まれつき肌や髪の色素が薄い「白皮症」で、耳が聞こえない「ろう者」です。中学部1年のころ、陸上競技を始めました。
中学部では、砲丸投げに取り組んでいましたが、高等部からはやり投げに転向。新たな才能を開花させました。
【青森聾学校高等部3年 古川瑛梨奈選手】
「記録が伸びていくのが、すごく楽しいです」
(Q.やり投げの記録を伸ばすために頑張っていることはなんですか?)「ドリル練習(基礎練習)は地味な練習なんですけれど、それを頑張っています」
古川選手はこの日、やりを投げるよりもはるかに長い時間を掛けて基礎練習に取り組んでいました。陸上部員は少人数、やり投げは古川選手のみという環境。地道に、1人で、取り組みます。
【服部アナ】
「今の練習は何のための練習でしたか?」
【青森聾学校高等部3年 古川瑛梨奈選手】
「やりを投げる時に足を上げるため、やりを平行に投げられるようにするための練習です」
記録を伸ばすポイントは、やりを「平行」に投げること。そのために大切なのは、やりを、後ろへ「平行」に引くことです。やり投げ初体験の服部アナウンサーは・・・。
【服部アナ】
「やり自体は軽いんですけど、後ろに引くのはなかなかの労力が要りますこれは。やっぱり長いから」
自分では平行に引いているつもり、だったようですが・・・肩とひじがガクッと下がってしまっていますね。地道な訓練が必要だということが分かります。このような動きの確認など、コミュニケーションは全て「手話」です。
【青森聾学校 阿保孝志朗監督】
「聞こえる子どもたちだったら、動きながら話せるので、細かなニュアンスを伝えられるんですけど、手話で話すと動きが止まっちゃうので、2つのことを一緒にできないというあたりにちょっと難しさを感じています。でも古川選手は、そこの読み取りが得意なので、滑らかに動きを習得できるのかなと思っています」
また、音のない世界がプラスになることも。
【青森聾学校3年 古川瑛梨奈選手】
「投げ方はまだまだなんですけど、私は聞こえないので、集中することができるところが強みかなと思います」
高い集中力を武器に、練習の成果を発揮します。
【青森聾学校3年 古川瑛梨奈選手】
「東北大会では、自己ベストを更新できるように頑張りたいと思っています」
強風の中迎えた高校総体東北大会当日。レベルの高い選手が集まる中、初めての舞台に立ちます。
緊張の1投目、助走から練習の成果を発揮します。2投目、体の軸をぶらしません。強風にあおられながらも、真っすぐにとばします。チャンスは1人3投。平行を意識した最後の1投も、しっかり投げ切りました。
結果は、36人中19位。全国大会に進むことはできませんでしたが、健闘しました。
【青森聾学校3年 古川瑛梨奈選手】
「自己ベストの記録は出せなかったけど、東北大会で、健聴者の選手と戦えたことが一番うれしいです」
今後は、聾学校の東北大会や全国大会で優勝を目指すという古川選手。その先には、大きな夢が。
【青森聾学校3年 古川瑛梨奈選手】
「憧れている選手は、この前デフリンピックで100メートル金メダルを取った、佐々木琢磨選手です」
「佐々木選手は有言実行できる人なので」
(Q.瑛梨奈さんもデフリンピック目指しますか?)「一度は参加してみたいなと思います」
八戸聾学校の先輩、デフリンピック金メダリスト佐々木琢磨選手の背中を追いかける古川選手の活躍を、今後も応援していきたいです。
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