今回の候補者には市長経験者もいますが、知事と市長ではどのようなところが大きく変わるのでしょうか?
【青森中央学院大学 山谷清秀さん】
「市町村と都道府県は大きな違いがありますので、知事は広い範囲に目を配るというのが大きなポイントになります。県の仕事は河川や県道、県立の学校や病院、保健所といった、市町村では対応できない広域的な問題に対応しなければなりません。それから、町村の役場では専門性のある職員を十分に雇用できるとは限りません。そういった小さな町・村で自分たちが解決できない課題をサポートする必要があります」
ということは、各候補者があらゆる地域に対して、広い視野で政策を立てているかも見定めるポイントでしょうか?
【山谷さん】
「まさしくその通りです。さらに、規模から見て市町村の上に県、さらに県の上に国と、上下関係があるように思われますが、実は2000年に地方分権一括法が施行され、国・県・市町村も対等という考え方になっています。知事も市長も行政の長である点では差がありません。ただ、これまでの関係上、知事になっていただく方は国との関係をどう作っていくのかも重要になります」
続いて、山谷先生が今回の知事選で注目するポイントは何でしょうか?
【山谷さん】
「最大のポイントは大きな変化を期待できるところだと思います。現職の三村さんが知事となって20年です。今回は候補者に現職がおらず、4人全員が新人です。そして自民党の推薦もありません。すなわち組織票が集まりにくく分散するため、選挙結果が予見しにくいと言えます」
「加えて注目しているのは県民と話し合う機会を持てるのかという点です。届け出順に、宮下さんは円の中心に自分を置いて、より近い距離で住民の方々と課題の共有を図ったり、ご一緒に活動されたりということで、集会の活動に熱を入れていらっしゃいます。横垣さんもエネルギー問題に関する声をすくいあげています。小野寺さんは地域の中心となる方々と地域の課題に関する情報共有、タウンミーティングを相当数重ねてきていらっしゃいます。楠田さんは青森県の強みを『第一次産業だ』として、そのさらなる強化を訴えていらっしゃいます」
「県知事の任期は4年ですが、この4年の中でも人々のニーズや価値観、考え方は変化していきますので、これにどう対応していかも重要な任務といえます」
それではここからは山谷先生が考える、各候補者の強みを一人ずつ見ていきましょう。まずは宮下さんです。
【山谷さん】
「宮下さんの強みは何と言っても住民との距離の近さです。だからこそ政策に具体的な住民ニーズを反映してきたと思います。むつ市長時代の成果を知っている住民からの信頼は特に厚いです。それから少子化対策や子育て支援については市長時代から力を入れていて、今回の知事選に当たっての政策にもそれは良く表われていると思います」
続いて横垣さんです。
【山谷さん】
「原子力・核燃料サイクルの問題はどの自治体も『先の見えない』課題になっていて、私も各自治体の関係者から『触れにくいんだ』と伺っています。県内でも大きな問題であるのは間違いありませんし、強い関心を持っている住民もたくさんいらっしゃると思います。その声を反映している立候補者だと言えます」
続いて、小野寺さんです。
【山谷さん】
「小野寺さんは総務省官僚の経験から、自治体の財政に強みがあると思います。青森市長時代も財政の健全化と市民サービスの維持向上の両立を図ってきました。今回の知事選の政策では、具体的な数字を提示し、『何を目標として掲げるのか』をはっきり示すことにこだわっていらっしゃる点も強みの一つと言えるでしょう」
そして、楠田さんです。
【山谷さん】
「楠田さんはどうしても政治経験の無さから、マスメディアでの扱いをみても注目されにくくありますが、『外から見た青森』『政治の素人から見た青森』を良い意味で訴えている候補でいらっしゃいます。彼を支持する声も決して軽視してはいけないと思います」
今回は20年ぶりに知事が変わる選挙となります。有権者の皆さんにはどのように今回の選挙と向き合ってほしいですか?
【山谷さん】
「この先10年、20年、あるいは100年先の青森をどうするか、その方向性を考えて舵を切っていくべきなのかを考える機会であると思います。また候補者の方々にはぜひ、当選後も住民との距離を大事にして頂くとともに、住民と日常的に接する現場の職員の方々の声に対しても、日常的に耳を傾けて頂きたいです」