現在、Ｕ-１８プレミアリーグで首位に立つ、青森山田高校サッカー部。毎年１００人ほどの選手たちがチームを巣立つが、５月は３年前に大学に進学した選手たちが、教育実習で戻って来る時期でもある。２０２３年は現役Ｊリーガーとして凱旋した実習生もいて、刺激を受ける現役生も。今回の母校帰還で得たものを実習生たちに聞いた。
◆「結局、サッカーが好きなので」
自分を奮い立たせてくれた母校。初心に戻れた３週間。（箱崎拓）
高校３年時にトップチームのセンターバックとして活躍した箱崎拓は大阪体育大学に進学。当時のチームは史上最弱と言われながらも、プレミアリーグＥＡＳＴを制覇、プレミアファイナルでも勝利し、真の日本一に輝いた。箱崎は、献身的な守備が評価され、この試合でのＭＶＰも獲得した。しかし、全国高校サッカー選手権では、決勝戦で静岡学園に破れて準優勝。表彰台から降りる途中に大粒の涙を流していたのが印象的だった。
現在は、大阪体育大学でチームをまとめるキャプテンを務めているが、それまでの大学サッカー生活は順風満帆ではなかったそうだ。２年生に上がるタイミングで怪我をし、約半年サッカーができない状態が続いた。サッカーよりも、他の楽しいことに流される時期もあった。しかし、「結局、サッカーが好きだったので、気づいて戻ることができました。それは高校時代のおかげかなと思います」
自分を奮い立たせ、軌道修正をするきっかけとなった母校での教育実習は、ハードな３週間となったようだ。慣れないデスクワークにハードなタイムスケジュール。実習後には、自身の練習に励む日々。しかし、「大学で失いかけた楽しい気持ちやサッカーの本質、最後までボールを追いかけるところや戦う気持ち。そういったことが、ここに来て、初心に戻れた気がします」と充実した教育実習となったようだ。卒業後は、選手としてプロの舞台に立つことを目指す。
◆「選手の夢が叶うことが自分の夢」
一番下のカテゴリーでも、チャンスは巡ってくる！（相内大斉）
「とにかくサッカーが好き」と熱く語る相内大斉は、青森県弘前市出身。中学では部活動としてサッカー部に所属していたが、青森山田高校に進学すると決めてからは、クラブチームに移籍してサッカーを続けたのち、青森山田高校に進学した。念願叶って青森山田高校のサッカー部員となったが、高校時代は一番下のカテゴリーだった。
ＧＫコーチを目指す相内は、大学のサッカー部で「指導者部門」に所属し、地元の中学生たちに指導を行っている。ＧＫコーチを目指すきっかけとなったのは、高校時代に指導してくれた大久保隆一郎ＧＫコーチ（現名古屋産業大学ＧＫコーチ）への憧れからだった。大久保ＧＫコーチは相内が高校在学中に青森山田高校を離れ、名古屋産業大学のＧＫコーチに就任したため、後を追うように相内も名古屋産業大学へ入学した。
「今は、名古屋ＦＣという素晴らしい集団と関わることができています。高校時代は下のカテゴリーでしたが、本当にサッカーが好きで好きでやってきたことが、今に生きています。巡り巡って報われるということを実感できたのは、名古屋産業大学のおかげです」と大学生活は充実しているようだ。
「将来は、教育の場に立ちたいと思っていましたが、コーチはやっていても、もちろん先生をやったことはありませんでした。学校で教わっていた立場から、教える立場に変わったことで勉強になりましたし、他の先生方から教わることがとても多かったので、勉強になりました」と手応えを感じた教育実習となったようだ。
卒業後はもちろん指導者を目指す。「受け持った選手全員の目標を達成させることが、将来の夢です。全国制覇やプロ出したいなど、色々と考えている指導者もいますが、そうではなくて、僕の抱えた選手全員の背中を押すことができれば、それが一番なので。選手の夢が叶うことが、僕の夢が叶うということだと思っています」
選手の夢を叶える指導者となった姿が見られる日は近いようだ。
取材・文／小野なな（フリー）
「現役Jリーガー」も教育実習に現る 青森山田高校を巣立った選手が母校で新たな経験＜前編＞
