「ものすごいことをやってくれた選手たちには、感謝しかないです」
試合終了後、そう話す正木昌宣監督の目から、涙がこぼれる。王座奪還の瞬間だった。
選手権は、初戦の飯塚戦からPK戦にもつれる展開になった。GK鈴木将永のシュートストップもあり、辛くも3回戦進出を決めると、3回戦の広島国際学院戦、準々決勝の昌平戦は、攻撃力が爆発して勝利。準決勝の市立船橋戦では1-1で決着つかず、今大会2回目のPK戦へ。青森山田は4人目のDF小林拓斗が外すも、GK鈴木が「俺が止めるから」と宣言。直後にPKストップに成功し、決勝戦進出を決めた。決勝の近江戦では、MF福島健太の大会初得点で先制。同点に追いつかれるも、FW米谷壮史が得点ランキング1位に並ぶゴールで勝ち越し、最後は3-1で試合終了。2大会ぶり4回目の歓喜に湧いた。
中学・高校の6年間を青森山田で過ごした小林は「青森山田に来た時からの目標である優勝をすることができて、嬉しい」と笑顔をのぞかせた。青森山田中3年時には、目標としてきた「全国中学校体育大会」が新型コロナの影響で中止。代替大会が行われた。「目標がなくなって、どこに向かえばいいのか分からなくなった」と当時の悔しい想いを語った鈴木は、「高校でタイトルを獲ろうと、毎日積み重ねてやってきた。支えてくれた、全ての人に感謝したい」と語った。
3冠を掲げてスタートした2023年度のチームについて、「新人戦の時点で、向上心のある選手たちだった」と語った正木監督。しかし、一つ目のタイトルであるインターハイを逃し、失意の夏を乗り越えての2冠達成。副キャプテンのDF菅澤凱は、「(キャプテンの山本)虎を中心に、もう一つ強い土台を作ろうとハードワークしてきた」と、2冠達成の要因を語った。
今大会、「団結力」「部員205人で」をテーマにしていたチームにとって、大きな声で声援を送り続けてきた応援団も大きな力になった。ピッチに立つ選手だけではなく、205人で勝ち取った優勝。現在の3年生たちが1年生の時に「3冠」を見て目標としてきたように、スタンドから見守り続けた後輩たちにとっても、大きな刺激になったであろう。
新チームの核となるMF谷川勇獅(2年)は「今の3年生を超えて、3冠を獲る」と宣言。早くもメラメラと闘志を燃やしている。1月末には早くも東北高校新人サッカー選手権が待っている。雪で覆われた学校のピッチはいつも通りの光景。偉業を受け継ぐ新たなシーズンはここから始まる。
取材・文/小野なな(フリー)
青森山田 全国高校サッカー選手権の優勝を全校生徒に報告 応援に感謝