長さおよそ14センチ、重さおよそ520グラム。9日に報道陣に公開されたこちらの化石。青森県内では初めてとなる“カイギュウ”の化石で300万年前のものということです。
「カイギュウ」とは、水中で生活する草食性の哺乳類の総称です。今回の化石は絶滅したヒドロダマリス属と推測されていて、姿形はカイギュウの仲間にあたるジュゴンやマナティに似ているということです。
この化石は、77年前に、今の深浦町関地区で発見されたもので、青森師範学校、後の弘前大学で博物学を教えていた和田干蔵教授から「アオモリゾウの象牙」として1983年に県立郷土館に寄贈され保管されていたものです。
「象牙」に昔から違和感を持っていたのが、県立郷土館の島口天副館長。
通常、象牙の断面には、血管や神経が通る空洞がありますが…。
こちらの化石の断面には、空洞がありません。
【青森県立郷土館 島口天副館長】
「象牙ではない、象の牙ではないのは明らかで、この辺は数年前から何となく把握はしていたんですね」
湾曲しているため、当初は“クジラの肋骨”ではないかと推測していたそうです。
しかし、2024年に入ってから、観察や文献・地層を調査し、専門家に写真を確認してもらったところ、「カイギュウの化石」と考えられることが分かりました。
県立郷土館では、25日に県総合社会教育センターでこの化石に関するセミナーを開催します。
また、6月4日は、化石が発見された場所の近くにある深浦町立修道小学校で、特別出前授業を行う予定です。
3種類の画像です。
「象牙」は空洞があるので、明らかに違うと判断したということです。
「クジラの骨」の断面は、全体的にスポンジ状で、隙間に脂肪を蓄え、軽くて水に浮く骨の作りとなっています。
一方…、「カイギュウ」は、浅瀬で底に映える草などを食べるので、水に沈むために、骨の隙間がなく重たい作りとなっていますが、今回の化石は、中央部分のみスポンジ状が見られ、これは成長段階の子どもの「カイギュウ」だったと見ています。
大人になれば隙間がなくなるということで、これが判断の難しい部分となっていました。
今後、近くの地層などを調べていって、全身骨格などが見つかれば、例えば「あおもりカイギュウ」とか「ふかうらカイギュウ」などと名付けることができるということで、見つかればいいなと期待を込めていました。