
青森の伝統工芸の技法を生かしたオリジナリティあふれる作品です。制作した高校生に、作品への思いを聞きました。
高校生の優れたファッションデザインを選ぶ全国大会、「ファッション甲子園」。8月31日に弘前市で開かれた最終審査会には、全国92校から寄せられた1908点のデザイン画の中から、1次審査を通過した31校34チームが出場しました。
青森県内からは弘前実業高校、柴田学園高校、黒石高校の3チームが出場。
柔軟な発想から生まれた個性あふれる作品が次々と披露される中、一際注目を集めたのが。
弘前実業高校の「木魂」です。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「皆さんは木で作られた服を見たことがありますか。ブナの木をテープ状にして作る青森の伝統工芸品、ブナコの技法を生かして木で服を作り、曲線をきれいに表現するために、ねぷたの技法も組み合わせました」
伝統的な素材を取り入れ、バランス良く美しく仕立てたことが評価され、見事、優勝。県勢の優勝は4年ぶり、弘前実業としては2018年以来7年ぶりです。
制作したのは、服飾デザイン科3年の樋川詞美さんと、モデルも務めた、ジョセフ・サラ・瑞希さんです。
【弘前実業高校3年 ジョセフ・サラ・瑞希さん】
「優勝だけを目指して頑張っていたのですごいうれしかったし、歓声もすごく多かったので頑張ってきて良かったなと思いました」
樋川さんがファッション甲子園に出会ったのは小学生の時。初めて見た大会で、弘前実業が優勝しました。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「私もいつか同じ舞台で優勝したいという思いがずっとあったので、こうして夢をかなえることができて本当にうれしいです」
2024年は、紙を使った「PAPER LESS」という作品で挑みましたが、優勝には届かず、審査員特別賞でした。その悔しさをばねに考えたのが。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「素材を何か工夫したいなと思いまして」
2024年の大会直後から考えたデザイン画。こだわりは、県の伝統工芸品、ブナコの技法を取り入れたことです。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「青森の方の中でもブナコを知らない方が意外と多くて、青森の方々にもっとブナコを知っていただきたいのはもちろんですし、県外の方々や海外の方々にもこうやってブナコを使えば、木で服を作ることができるんだというのを伝えたくて、この作品を作りました」
ブナコで服を作るにはどうすればよいのか。2人は弘前市のブナコ本社で打ち合わせを重ね、8月には西目屋村にある工場を訪れ、3日間かけて、職人たちから技法を学びました。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「曲線をきれいに表現するために何度も調整して、たくさんブナコの方々に協力していただきながら作りました」「ボンドだけだとくっつかないところもあったりしてそういうところは、いろんな接着剤を試しながら2人でたくさん試行錯誤しました」
ブナコだけでは重さが出てしまうため、スカート部分にはねぷたの技法を取り入れ、針金と和紙で軽さを出しました。
【弘前実業高校3年 ジョセフ・サラ・瑞希さん】
「一番上にあったスカートは頭とか肩が通るサイズにしないといけなくて、針金なので着るときにちょっと痛かったり、重かったので肩が痛かったりしてすごく大変でした」「職人さんたちの技ってすごいなと思ったし、自分もその技を少しでも身に着けられたのがすごくうれしいです」
7月からおよそ2カ月掛け、大会前日に完成した「木魂」。ステージでは、ブナコランプをモチーフにしたスカート部分に明かりがともされ、会場を沸かせました。
「木魂」を含む受賞した7作品は、17日から23日まで、東京の日本橋三越本店で、展示されます。
「曲線のきれいなところとか、装飾の部分とか、全体的なバランスとか、いろんな視点でいろんな見方で見ていただけたらなと思います」
【弘前実業高校3年 ジョセフ・サラ・瑞希さん】
「これを機にぜひ県外の方にも青森の伝統工芸品である、ブナコとねぷたについて知ってもらえたらなと思っています」
ジョセフさんの夢は、デザイナーが描いたアイデアを形にするパタンナーという職業です。
【弘前実業高校3年 ジョセフ・サラ・瑞希さん】
「平面な紙から立体の服を作り上げるその技術にすごく魅了されて、私もパタンナーになりたいと思って」
そして、樋川さんの夢は。
【弘前実業高校3年 樋川詞美さん】
「世界で活躍するファッションデザイナーになりたいです」「日本人だからこそできる作品というものを作って海外でも発信していきたいです」
プロの技を学ぼうと自ら行動したその努力が今回の結果につながったと思います。この経験を自信に変えて、将来、国内外で活躍してほしいですね。