２年ぶりの高校サッカー「３冠制覇」にむけて、まずはＵー１８プレミアリーグでの戦いをスタートさせた青森山田高校。開幕後の５試合を４勝１敗、勝ち点１２で終え、現在東地区で首位に立っている。順調な船出に見えるが、チームは走り出したばかり。序盤戦を振り返る。
シーズン前の春遠征では負けなし。２つの国際大会を優勝で飾り、ベスト１１やＭＶＰ、ゴールデングローブ賞などを総なめにして、青森に帰ってきた新チーム。しかし、成績とは裏腹に、選手たちの表情は浮かなかった。「正直、あまり手応えがないんです」「まだまだこれからです」「満足はしていません」と口々に語る。３冠を達成した２年前の先輩たちでさえも成しえなかった優勝だというのに、である。
「プレミアリーグは、相手がもっと強くなると分かっていたので、青森に帰ってきて、開幕戦の柏レイソル戦に向けて緊張感を持っていました」とチームを引き締めるのは、今シーズン、キャプテンを務める山本虎。「今年のチームは、勝ちたい、うまくなりたいというパワーがある選手たちが多い。同じ方向を向き、目指すものが決まっていて、ゴール地点が決まっている。今は、乱れることなくやってくれているので、試合で勝っていても、まだまだ！という気持ちになっているのでは」と語るのは正木昌宣監督だ。
全員が、練習から緊張感を持ち、満足することなく臨んだ結果、プレミアリーグでは開幕３連勝と良いスタートを切った。しかし、ホームで迎えた第４節。開幕からこれまで１勝も挙げていなかったＦＣ東京Ｕ－１８に敗戦。初の黒星を喫してしまう。「それまで３連勝していたので、勝てるだろうという慢心が少なからずあった」と振り返った山本。正木監督は「それを言い訳にしたら、青森山田じゃなくなる」としつつも、この試合の１週間前の旭川遠征が、青森とは比べ物にならない寒さや、悪天候の中でのフェリー移動などで、疲れが残ってしまったことも影響したようだった。
昨シーズンは、開幕から３連勝と波に乗るも、その後は泥沼の５連敗。今シーズンも、昨シーズン同様、開幕３連勝と幸先の良いスタートを切ったものの、第４節で初の敗戦となった。前年の二の舞にならないためにも、大事な一戦になるであろう第５節の大宮アルディージャＵ１８戦（埼玉）に向けて、「３連勝は、相手も手探り状態できていたけど、今はほぼ分析もされてきて、山田の特徴を殺しつつ、相手チームの良さを出す戦い方になってきている。優勝するなら、連敗は絶対にしては駄目。負けた次の試合は大事なので、もう１回勝負にこだわるところを、アルディージャ戦で出せれば」と正木監督。山本は「ＦＣ東京Ｕ－１８戦は、集中力が切れて失点してしまったが、その反省点を生かせれば」と意気込んで、アウェーに乗り込んだ。
そして迎えた大宮アルディージャＵ１８戦。前半１８分に失点し、１点ビハインドで前半を折り返したが、後半は主将のＤＦ山本虎、ＦＷ米谷壮史、ＭＦ川原良介が得点を挙げ、３－１で勝利。見事な逆転劇で連敗を免れた青森山田は首位に立った。
「今年のチームは、全員が謙虚。満足することなく、全員がまだまだという気持ちを持っています。まだ１敗しただけ。優勝は狙っていますが、優勝だけを見すぎずに、目の前の１戦１戦をしっかり戦います！」と力強く語った山本。
今シーズンのチームの目標は「圧倒して優勝」「３冠」であるが、選手たちの口からはよく「圧倒」という言葉が出てくる。それは、３冠した２年前のチームを、１年生の時に見ていたことが大きいのではと正木監督は分析する。「自他共に認める完璧な１年だったと思う。あれを見てしまったら、あんな風になりたいと思うだろうし、良いモデルがいるのは大きい。今の３年生が、１・２年生や中学生にとっての良いモデルになってくれれば」
２０２３年、「圧倒」の青森山田を見られるだろうか。次節は５月１４日（日）、ホームで流通経済大学付属柏高校（千葉）を迎え撃つ。
取材・文／小野なな
