青森県内のホタテの水揚げ量の推移です。ここ数年減少が続き、2024年はおよそ3万1千トンと平成以降では最も少なくなりました。この危機的な状況に県や関係機関はどのように取り組むのか、取材しました。
養殖ホタテの生産が盛んな青森県平内町。高水温の影響などにより打撃を受けています。2024年の水揚げ量は1万1580トンと2023年の4割以下にとどまりました。
【ホタテ生産者】
「そもそも生育が悪いし、生存率も非常に悪い」
平内町漁協などによりますと、2024年の秋以降、稚貝が死ぬ被害が拡大していて、へい死率は9割ほどだと言います。
1月、平内町で開かれた知事との対話集会では、産卵する親貝の確保に向け、県の支援を求める声が相次ぎました。
【ホタテ生産者】
「陸奥湾全体で母貝(親貝)の対策をしていかないと、ホタテが陸奥湾からこの先なくなるんじゃないかと思います」
「ホタテを(他地区から)譲ってもらうといっても、それを私たちは母貝(親貝)・活貝(成貝)まで成長させて販売するわけですから、もちろん代金は支払います。その際に県からいくらかでも補助などをお願いできたらと思っています」
このような状況を受け、県は陸奥湾ホタテの総合戦略を推進する費用に5億6千万円を充て、効率的な稚貝確保に向けた技術開発や、高水温に対応した養殖技術の開発に取り組みます。
【青森県水産振興課 種市正之課長】
「海況自動観測システム=ブイロボというものがあり、これを10年ぶりに新しくして、海流や水温であるとか、流向・流速、それから酸素量などを把握して、漁業者がそれをもとに常にリアルタイムで、スマホなどで海の状況を確認して養殖管理のために役立てていくことを目指しています」
さらに、漁業者の資金繰りも支援します。
【青森県水産振興課 種市正之課長】
「融資が必要だという方に関しては、関係団体と県が準備している高水温生活対策資金の保証料が無償で、これまでの融資とは別枠で借りられる融資制度となっていますので、活用していただければと思います」
一方、養殖ホタテの生産現場では、陸奥湾の高水温は今後も続く可能性があるとみています。
【平内町漁協 柴田操専務】
「将来に向けてまだまだ高水温は続いていくのだろうと思いますので、それに耐え得るホタテの生産というのには期待しています」
ただ、平年並みの水揚げ量に回復するまでには数年程度かかると見込んでいます。
【平内町漁協 柴田操専務】
「稚貝が順調に確保できたとしても、そこから2~3年成貝までもっていくまでかかりますので、トータル的に考えれば最低でも3年、順調に平年並みまで戻るとなれば5年くらいかかるのではないかと考えています」
青森県漁連の二木春美会長は、ホタテ産業全体が危機的な状況だと懸念を示しています。
【青森県漁連 二木春美会長】
「来年度もこういう状態が続くということで、恐らく3年続けば生産者・加工業者も本当に共倒れになってしまうのかと、今懸念しているところです」
青森県は、陸奥湾ホタテの加工・流通・販売を含めた300億円産業の構築を目指していますが、それには年間8万トンの生産量が必要とされています。
2025年も減産が見込まれる中、安定生産に向けた取り組みが急務となっています。
地球温暖化に伴う高水温は、ホタテ以外の魚介類の水揚げにも影響を及ぼしていて、気候変動への対処は全国的な課題となっています。